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☆ご注意
・この「誤読メモ」は本の内容を僕の脳内フィルターに通してアウトプットしたものです
・本の文章の抜出ではありません
・僕がおもしろいと思った箇所を抽出しているため、本全体の要約にはなっていません
・僕が著者の意図を「誤読」している可能性もあります
・本の内容を確認したいときは、必ず原典にあってください
・★印はMarinによる注です
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p.267あたり
「わかる」とは慣れる、ということ。最初はちんぷんかんぷんでも、手当たり次第に読み書きしていくと「わかっている」気になる。さらにそのテーマについて人に話すと、自信がついてますます「わかる」。ところが現地に出向くと即座に「わからなくなる」。
p.268あたり
現地でテーマについて話を聞いても、本当に人々が思っていることは聞き出せない。目的は「わかる」ことなので、現地の人の話に合わせないといけない。でもそうするとひとりひとりの話は「わかる」し納得する。でもたくさん話を聞いて納得と納得が重なり合うと全体がわからなくなる。
p.268あたり
たくさんの人の「実は・・・」という話を聞くと、賛成派vs反対派のような線引きができなくなってくる。境界がはっきりしなくなる。なぜこんなにわからないのか。
p.269あたり
そのわからない理由について悩んだ末、ひとつの仮説に行き着いた。それは民主主義というものが、ある「からくり」に基づいているから、というもの。「民主」というのは、「みんなが主役」という意味だが、それは「全員が主役」というのはただの理想であって、現実にはありえない。
★民主主義は実際には存在しない「みんな」を前提としているという意味で、所詮はフィクションなのだが、誰も本当のことはいえない。だけど、国民の多くはそのフィクションを素朴に信じているので、「国民の権利」が侵害されたと思うとやっきになって国家を攻撃するのだ。→このあたりに興味がある方は、佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』を読んでみてください。
p.269あたり
現実にはありないことを、いかにもあるようにみせるために「からくり」が必要になる。そのからくりとは、具体的な「一人ひとり」とは別に、抽象的な「みんな」をつくりだすということ。「世論」、「国民感情」などというものには実体はないが、それを誰かがつくっている。
p.269あたり
理想を語ると、それがかなえられていない「みんな」が生まれる。たとえば「平等であるべき」とされた途端、不平等な存在が生まれ、みんなが「平等」を追い求める。こうやって永遠に満足できない「みんな」が生まれる。
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春樹の解説を続けてみていきましょう。
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僕は、この本を読んで、まさに春樹がいうように「世の中のものごとには結論なんてないかもしれないなぁ」と思ったのです。民主主義という制度の滑稽さにも改めて気づかされました。
理想を語ると、それがかなえられていない「みんな」が生まれる。たとえば「平等であるべき」とされた途端、不平等な存在が生まれ、みんなが「平等」を追い求める。こうやって永遠に満足できない「みんな」が生まれる。
p.270あたり
本書は、「からくり民主主義」のもと、「みんな」の脇役になった(★「みんな」に入れなかった)日本人を描いたもの。現地で私がわからなくなったのは、民主主義が前提とする抽象的な「みんな」と、具体的な一人ひとりが語る「みんな」がズレているから。ズレとズレが重なり合って糸口が見えなくなるのは、民主主義の「からくり」によるところが大きい。
Marin Review 高橋秀美『からくり民主主義』新潮文庫2009
必読度 ★★☆(星2つ)
不思議な読後感の本です。
10編の独立したルポタージュをまとめたものなんですが、どのルポにも結論めいたことが書かれていない。それぞれのルポにおける著者のスタンス、言いたいこともなんだかぼんやりしていて、よくわからない。
だけど、本全体を見てみると、おぼろげにテーマが浮かび上がってくる(ような気がする)。それが民主主義の「からくり」です。
実はこの本、とても素敵なおまけがついています。なんとあの村上春樹が解説を書いているんです。
この解説がまた絶妙。著者である高橋の人柄はこう描写されています。
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p.273あたり
・高橋さんはちょっと変わった人で、いつも大きな体をいくぶん丸め気味にして「いや、ムラカミさん、困りました。弱りました。」といっている
・腕組みがとても似合う
この描写をみるだけで、春樹が高橋さんに好印象を抱いていることがわかるし(そうじゃなきゃ解説も書きませんよね)、読者である我々も高橋さんを身近に感じられるのではないでしょうか。
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春樹の解説を続けてみていきましょう。
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p.274あたり
・高橋さんが真面目に取材をして、たくさんの人の話を聞けばきくほど、結論がでなくなってくる
・しかし、ノンフィクションの書き手に求められているのは、「いや、弱りました、どうしたものか」という文章ではない
・でも僕には高橋さんの言いたいことが痛いほどよくわかった。
・僕がサリンガス事件を扱った『アンダーグランド』を書いたときにも思い知らされたが、世の中のものごとには多くの場合、結論なんてないのだ。
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僕は、この本を読んで、まさに春樹がいうように「世の中のものごとには結論なんてないかもしれないなぁ」と思ったのです。民主主義という制度の滑稽さにも改めて気づかされました。
収められているルポタージュは、「統一教会」、「オウム」にはじまり、「沖縄米軍基地問題」、「横山ノック知事セクハラ事件」、「富士山青木が原樹海探訪」など、日本の社会問題のごった煮のような様相です。
今回の誤読メモでは、あとがきのみを載せるという超変なまとめ方をしてしまっているので、個別のルポはぜひ本でご覧になってください。
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