2012年9月8日土曜日

藝祭2012が開催中(9月7日〜9日)

きのう、友人と東京藝術大学の学園祭「藝祭2012」に行ってきました。

模擬店はおいしいしお酒も豊富(割高だけど)、
学生さんの作品もタダでいろいろ見れるし、めちゃ楽しいです。

夜の模擬店はビアガーデンさながら。
涼しくなってきたので最高に気持ちい良いですよ。

あと学生は美女比率が有り得ないくらい高いです(笑)
こちらも要注目・・・。

以下は気に入った作品の写真です。

お地蔵さんみたいな

僕の大好きな鳥、ハシビロコウさん (上野動物園にいます)

ねぶたっぽい 

 アンドロイドみたいな。きれいでした

 村上隆の弟子、Mr.っぽい

平山郁夫っぽい 

 漆塗りのザク

 エヴァの使徒っぽい

 和紙で作られているそうです。

 こんな企画も

 理系の学会みたいなものも

 ネオ東山魁夷1

 ネオ東山魁夷2

 もろ千住博

 ツタンカーメン

夜の出店

2012年9月2日日曜日

攻めて、待つ―リーダー待望論を再考する―

「政治家・橋下徹」の強さの源泉はどこにあるのか。

生い立ち、性格、頭の良さ、若さ。
よく挙げられるのはこんなところだけど、それは本質じゃない。

僕は、「政治家・橋下徹」の強さは、彼が持つ弁護士バッジから生まれていると思ってる。

職業政治家がもっとも恐れるのは落選だ。
彼らは落選した瞬間に無職になる。

エリートビジネスパーソンであれ、エリート官僚であれ、いちど政治家になれば、過去の職歴はリセットされる。議員のうちは「官僚出身」、「民間出身」ともてはやされるが、落選すればタダの無職の人である。輝かしい経歴がかえって再就職の足かせになるかもしれない。

もちろん、田村耕太郎のように、異常なバイタリティと自己顕示欲があれば落選後に大活躍ということもある。ただし彼は外れ値なのでデータとしては参考にならない。

もっとも悲惨なのは、市議会議員→県議会議員→首長→国会議員というコースを歩んできた人だ。このような人の稼業は政治家しかない。よっぽどのお金持ちで仕事をしなくても生活できるか、コネがある民間の会社で再雇用してもらえなければ、本当に食いっぱぐれになる。

では橋下はどうか。彼にとって落選は怖くない。なぜなら彼は弁護士としていつでも「社会復帰」ができるからだ。僕はこれが政治家・橋下の強さの源泉だと思うのだ。

落選を恐れる議員は、世論、支持者、利益集団、地元の顔色を見ながら政治家として活動していく。世論調査の動向に一喜一憂してビジョンを失い、支持勢力の圧力に屈して既得権に取り込まれる。多くの政治家はこうやって改革から遠ざかっていく。

橋下のほかにも「稼業」があるから改革を押し通せた政治家はいる。たとえば、竹中平蔵には「大学教授」という稼業があった。石原慎太郎もそうだ。彼があの歳まで豪腕を維持できているのも、彼が「作家」というキャリアを後ろ盾に政治家人生を進んできたからではないか。

もちろん彼らだって、落選は避けたいと思っている。でも、心の奥には「オレは政治家じゃなくてもやっていける」という強い思いがある。その思いが、世論と距離をとり、既得権勢力を寄せ付けないバリアになる。

いまの日本では、政治家に立候補するということは人生を賭けた「ギャンブル」である。自分のキャリアを捨てて政治家になっても、選挙に落ちれば即無職である。いくら志のある優秀な人材であっても、橋下のような「稼業」がなければ、合理的に考えて出馬は避けるだろう。

とても優秀で仕事がうまくいっているあなたの友人を頭に思い浮かべて欲しい。彼には小さな子どもがいて、来年2人目が生まれるとしよう。そんな彼が突然あなたに、「次の選挙に出ようと思う」と切り出す。あなたは強い口調で、「考えなおせ!」というのではないか。

「すべてを投げ打つ覚悟がなければ政治家になる資格はない」という人もいるかもしれない。しかし、政界を見渡して「政治家になる資格を持っている」といえる人物はどれほどいるのか。現在の混迷した政治状況は、このような不公平で非合理な政治環境によって生まれたのである。

橋下たちのような「稼業」を持っていなくても、優秀な人材が政界にチャレンジできるような環境をつくらなくてはならない。どんなに能力を持った政治家でも常に落選のリスクに晒されている。落選政治家が再起に向けて安定した環境で力を蓄えるには、シンクタンクや大学などの研究機関のポストに着くことが一番だろう。議員として政策過程のただ中にいた人物が、研究や教育の場に入ることは、社会にとっても大きな刺激となる。

これは口で言うほど簡単なことではない。多くのシンクタンクは収益体制が弱く、大学の経営も厳しい。落選政治家を受け入れるプールとしては心もとないのも事実だ。しかし、落選政治家を受け入れることによる宣伝効果、政界とのパイプづくりや教育面でのメリットなど、プラスの側面も数多くある。今後の動きを期待するだけの条件は揃っている。
優秀な人材が数多く政界にチャレンジすれば、それだけ優秀な政治家が現れる可能性は高まる。その環境を整えることが重要なのである。

日本には「リーダー待望論」が蔓延していると言われる。しかし、優秀なリーダーを期待することの何が悪いのか。市民による社会変革を期待するよりもよほど現実的で筋が良い。橋下徹は、弁護士バッジを後ろ盾に政界に殴りこみ、いまや日本国民が最も注目し、期待する政治家となった。

「バッジ」を持たないポスト橋下をいかに政界に呼び込むか。これを多くの人が現実の政治課題として認識して真剣に取り組めば、リーダー待望論を単なる夢想だと笑う人はいなくなるだろう。「座してリーダーを待つ」のではなく、「攻めてリーダーを待つ」時代が来たのだ。

2012年7月7日土曜日

出張hoooon!@赤坂

大学院生が、本に対する「偏狭の愛」をプレゼンするイベント、hoooon!

7月5日(木)に、実業家で書評ブロガーとしても著名な橋本大也さんのお招きで、初めての出張イベントをやってきました。

左端が大也さん。
お若いので僕らと並んでいると院生に見えるかも(笑)


今回の出張hoooon!のオファーは、「院生チームが4人でブックジョッキーを行ったあと、大也さんを中心とするプロ読書家チームがブックジョッキーをやる」というもの。このオファーを見て、これは勝負を挑まれたな、と・・・(笑)

社会人の方からすると、「院生がなんかおもしろそうなイベントやってるな」というくらいの印象で、僕らのブックジョッキーの内容そのものにはあまり期待されていないだろうと思いました。僕らとしては、「見てろよ、度肝抜かせてやるぞ」とめちゃくちゃ気合いが入っていたわけです。


そんなところに、大也さんからプロ読書家チームの編成が届きます。メンバーには、フリー編集者の仲俣暁生さん、メディア・アーティストの江渡浩一郎さんが入っているじゃないですか…。相手に不足なし。というか、すごすぎ。さらに気合が入った反面で、正直びびりました。

そんな感じで興奮と緊張が入り交じる不思議なテンションで会場の赤坂に向かいました。通常のhoooon!は立川のクラウドカフェで開催してます。いつもは東京の片隅で密かにやっているわけですが、今回の会場は東京のど真ん中の赤坂。立川で調子に乗っていた僕ら大学院生は、大人の街・赤坂の雰囲気に飲まれて、道に迷いながら時間ギリギリに会場に到着(笑)。

会場に着くと、いきなりプロ並みの音声&映像機材のセットがどーん。


写真左はzerobase代表取締役社長の石橋秀仁さん


挨拶もほどほどにスタンバイ。4人で並ぶとこんな感じに。


ここはスタジオか(笑)


hoooon!チームのトップバッターは、下西風澄。彼が一冊目に持ってきたのは、認知科学、心の哲学の最先端の研究者であるA.Clarkの主著『Being There』。

下西風澄(東大大学院D1/科学哲学)
一気に観衆を引き込むスーパーなBJを披露。



下西のBJはめちゃくちゃハイスピード&ハイコンテクストなのがウリ。社会人の方はなかなかこういうタイプに出会わないと思うので、一発目に彼の本気をガツンとかましてもらい、一気にこちらのペースに引きこもうとう狙いでした。


この作戦は奏功します。彼は「これまでの認知科学では人間の心や意識の生成には脳よりも身体が大きな役割を果たすとされてきたが、この本は生物学やロボット工学の事例を出しながら、人間の心というものはもはや身体の制約も超えて人間の外側=環境に存在するという主張を行い、認知科学と哲学のパラダイムを動かした」と見事な紹介。彼のBJが終わった瞬間、会場からスタンディングオベーションばりの大拍手。




よっしゃー!  





って感じでした。


僕らのクオリティなら大丈夫だという根拠なき自信はあったのですが、やっぱりめちゃくちゃうれしかった。あの光景は目に焼き付きました。でも、それで僕自身舞い上がってしまって、次の本はあんまりうまく紹介できなかったんですが(苦笑)


松原真倫(慶應SFC大学院D2/政治学)
アウトロー大好き。2冊目に宮崎学の『法と掟と』を紹介。



石橋一希(首都大大学院M2/都市計画)
緊張でBJ中に本を落とす。チーム最年少のご愛嬌ってことで!


 連勇太朗(慶應SFC大学院D1/建築)
揺るぎなき自信。赤瀬川原平『東京ミキサー計画』で連節炸裂。


僕らの後は、大人チームによるBJ。本のセレクトも、紹介の仕方も渋くて良かったです。言葉がゆっくりと体全体に染み渡っていくようなBJが聞けました。いつになったらああいう話し方ができるようになるんだろうか


左から橋本さん、仲俣さん、岸正也さん、江渡さん。
豪華メンバーの貴重なショット。 


今回の出張hoooon!で、僕ら以外の方のBJを初めて見て、改めて僕らのBJの強みはどこにあるのか考えました。



スピード感、リズム感、グルーブ感。そしてそれらが重なったときに生まれる場の緊張感。


それが僕らのBJの最大のウリだと思います。昨日もBJをやりながら、場がギリギリ引き締まっていくのを感じました。


早いスピードで密度の濃い情報を一気に出す。これを各自が文脈を繋ぎながら連続して行なっていくことで、緊張感の糸を紡ぎだす。hoooon!がイベント後半に盛り上がっていくのはこういうところに要因があるんじゃないかと思います。


hoooon!を生で見ていない方には緩いイメージで捉えられることが多く、昨日も大也さんや仲俣さんが「予想外の緊張感でびっくりした」とおっしゃってました。このギャップは萌えなのか、どうなのか・・・(笑)。気になってきたぞーって方は、ぜひ一度体感しに来てください。

実はこのイベント、


次回13日が最終回です。
ラストチャンスでございます。


ご予約はこちらから。




メンバー一同お待ちしております。


 今回のBJ4人。
助友文香(首都大院M2/空間デザイン)を加えた5名で活動中です。



2012年6月19日火曜日

「好き勝手に生きていく」という正義。―書評 松本哉『貧乏人の逆襲―タダで生きる方法』ちくま文庫



「お金を使えば豊かに暮らせる」は当たり前



常識的には、貧乏な人は、お金持ちの人に比べて、豊かな暮らしができないということになっている。この常識というのは、「お金を使うことが豊かな暮らしにつながる」という考え方だ。これは間違ってはいないが、当たり前すぎるので何もおもしろくない考え方である。

坂口恭平さんの『TOKYO 0円ハウス 0円生活』には、ホームレスの鈴木さんが、お金をあまり使わないで工夫して生きていく様子が活き活きと描かれている。数千万円のローンを組んでマイホームを持たなくても、河川敷の「0円ハウス」でそこそこ快適な暮らしを送ることができることを世に知らしめたという点で、この本の価値はとても大きいと思う。

僕は「お金をたくさん稼いでたくさん使う」という生き方も、「お金はあまり稼がないけど、うまく工夫してお金をなるべく使わない」という生き方も、どちらが良い生き方とは言い切れないと思う。もちろん、お金を稼いで使えば、そのぶん税収が増えたり、企業が儲かったりする。でも、だからといって個人が「稼いで使う」というライフスタイルを選択しなければいけないかというと、全然そんなことはない。

さいきん自己啓発の本がよくベストセラーに並んでいるけど、それらは基本的に仕事の生産性を高めるための方策とか、仕事で悩んだときはこうやって乗り切れ、という本しかない。まったくおもしろくない話である。「上司にバレない仕事のサボり方」とか、「バイトで楽しく暮らすための貧乏生活術」みたいな本がベストセラーに並んでもいいだろう、と思う。

「勝手に生きていく」ための戦略


そこで紹介したいのが、松本哉『貧乏人の逆襲―タダで生きる方法』(ちくま文庫、2011年)である。著者の松本さんは、1974年生まれ。高円寺でリサイクルショップを営んでいる。

本書の冒頭はこんな感じで始まる。

「よ〜し、こうなったら好き勝手に生きてみようか! やい! もう、くだらない奴らの言うことは聞かないで、のびのびと生きてしまおう。我々貧乏人が、ちょっと世にのさばいまくってしまおう! よし! 決めた決めた! 祭だ祭だ! 騒ぎだ騒ぎだ!!」(p.14)


これだけ読むととんでもない本である。引くレベルである。読むの止めようかな...」と思った方、ぜひ思いとどまってください。この本は、「好き勝手生きるためにどうしたらいいか」という人類史上最大の問い対して、極めて具体的な答えを出している。

好き勝手生きる術として、著者は大きく4つの戦略を授けてくれる。

戦略1.金を湯水のごとく使わなくても生活できるようにする。それもしみったれた貧乏自慢みたいなものじゃなく、いざというときでも何とかなるような生活術を身に着ける


「ボロアパート研究」、「必殺! 野宿作戦」、「知らないパーティーに潜り込め」など超具体的な戦術が載っています。なかでも爆笑なのが「ヒッチハイク講座」だ。「ヒッチハイクは別に人に甘えているのではなく、『行き先が同じ→空席がある→俺は歩き→座らせろ』という、この理屈の正しさを頭に叩きこんで挑もう!」と書いてある。これはすごいけど、間違ってない。

戦略2.街ぐるみ、地域ぐるみでのびのびやっていければ、助けあいなんかもできてより楽になる


言わずと知れたソーシャル・キャピタルである。ここでは「商店街作戦」、「町内会作戦」、「回覧板作戦」などが紹介されている。「いくら三越やドン・キホーテの常連になってもいざというときには役に立たないが、自営業軍団と仲良くしておけば絶対にいいことがある」というのは納得だ。飢えた時には、肉屋や八百屋から食べ物をもらったりできるかもしれないのである。

僕がいちばん感動したのは、「イカサマパトロール追放作戦」である。著者は、多くの商店街のパトロールを、「不審者を見つけて警察に通報するだけのパトロールなら、単なる警察の手下で、『自治』の風上にも置けない集団だ。本来は自分らの街を守るという『自治』の意味のパトロールだから、自分達で問題を解決しなきゃいけない」と批判する。めちゃくちゃ正しい。松本さんは「自治の理想」として、パトロールがコソ泥を発見したときの例を出している。

パト「何でこんなことやったんだ。福島のおふくろさんが泣いているぞ」
ドロ「へぇ、会社が倒産したあげく、実家が火事で焼けまして、おまけにせがれは車で子どもを轢いちまい、借金まみれに……。プロミスの追っ手を振り切り、何とか東京にたどり着いたところで手持ちの金もなくなり……」
パト「しょうがねぇ。じゃあしばらく、うちの材木屋で木でも切ってほとぼりをさましない(原文ママ)。そのかわりもうこんなことすんじゃねえぞドロ「この恩は一生忘れません」(p.106)

いやぁ最高でしょ。

戦略3.仕事や遊びを自前で用意してストレスや浪費を減らす


お金のために訳の分からない奴に雇われてしまっては、楽しく生きられない。そうであれば自分で事業をはじめるしかない。それが著者のスタンスだ。著者は、シャッター街になっていた高円寺の商店街の物件を月5万円で3ヶ月借りた。友人と2人で借りたので開業資金は2万5千円。安い! 僕が仲間と立川でやっているイベントもそうだけど、「頑張っている若いもんを応援だ!」とか言って、格安で物件を貸してもらえることがあるのだ。どんな感じで商売をしているかが本のなかに書いてあるが、こんなんで商売が続けられるのか!と驚くほどのユルさ。これは楽しいこと間違いない。(ただし儲からない)

著者は仕事だけじゃなくて遊び場も自分たちでつくれ、と説く。

「とにかく地域のいろんな奴がなんかやれるようなスペースがあったら相当楽しい。やりたいけど場所がなかったような連中はここぞとばかりにいろいろやりだすし、そういうことに興味なかった奴らもなんかやるキッカケになるかもしれない。それに、いろんなイベントが行われいたら、まったく違う分野のものと接する機会ができるので、今まで縁のなかったことに目覚めてしまったりするかもしれない。当然、知り合いも増えまくるので、笑えるイベントやアホな出来事などの情報がやたら舞い込んでいくるようになる。」

これも文句なく正しい。最近自治体が空き店舗にこういうパブリックスペースをつくろうとしてますが、行政のプロデュースでおもしろくなるはずがないわけですよ。こういう自発的な動きが必要ですよねぇ。

戦略4.こんな生き方の妨害になるようなものが出てきたり、何か抑圧されたときに「冗談じゃねぇ」と抵抗する術を身につける


最後は「反乱のススメ」。反乱といっても「ひたすら街に打って出て遊ぶ」というもの。駅前で勝手に騒いだり、デモや選挙を使ったりする。著者がこれまでやってきた波乱はどれも爆笑ものだ。

たとえば大学の頃にやった「ボッタクリ学食粉砕闘争」。値段が高いわりにたいしてうまくもなく量まで少ない学食を懲らしめるため、学食突入集会を実施。こたつに担ぎ棒をつけた「こたつ神輿」大バカな奴らを載せて、200〜300人で学食に乱入。さらに昼休みの学食前で100円カレーを売りまくるという闘いもやったらしい。実家が農家の学生から米や野菜をもらい、徹夜でカレーを作って400食を売り上げ、学食は大打撃。

大学を卒業してから反乱はどんどん大規模に。駅前でバカ騒ぎをしたかった著者は、選挙のときに候補者が駅前で大声で演説を行なっていることに目をつけ、「これって立候補すればできるんじゃないか…」と思い、杉並区議会選挙に立候補する。「駅前にバカ騒ぎの解放区を作って、いまの世の中の無意味な秩序がどれだけアホらしいものかを知らしめてやろう」(p.175)というのが目的で選挙に出ても、合法なのである。

選挙期間中の一週間は、でかいスピーカーを何個も積み込んだ選挙カーで「鼓膜を破るくらいの大音量」で高円寺駅前をライブ会場にしていたらしい。音楽の合間は「貧乏人がのさばったら毎日こういうことをやってやる!」「こんな窮屈な世の中でおとなしくしてると思ったら大間違いだ! 役立たずの恐ろしさを見せてやる」と街頭演説をしたそうだ。

最高なのは、選挙カーがすれ違う際に「○○候補の健闘をお祈りします」というのが慣例になっているのだが、こう呼びかけられた著者は「俺は○○候補の健闘は祈っていません。自民党はさっさと落選しろ!!」と返したそうだ。選挙は民主的な戦争なのだから、これがあるべき姿なのである。

「勝手に生きていく」という正義



松本さんのスタンスは、「好きなことをやる→困ったことが起きる→もめる→何とかなる(何とかする)」というもの。多くの人が「社会のために苦労して頑張る→世の中が栄える→そのおこぼれを頂戴する」という人生を送っていることをボロカスに批判している。


僕が松本さんに強い好感を持っているのは、彼が「勝手に生きる」ために、「自治」や「自立」が必要だと考えている点である。政府や会社の上司に説教くさいことを言われないためには、自分でお店を立ち上げたり、商店街の人と協力したりすればいいのだ。

数年前に格差社会論が話題になったとき、議論の焦点となったのは「福祉」だった。貧しい状況に陥った人を社会でどう支援するかという話だった。『貧乏人の逆襲』は福祉とは違うアプローチをしている。松本さんはこんなことを書いている。

「本当に働けない人は生活保護など行政に頼るという手段もあるのだが、その場合、国が傾いた瞬間に餓死しかねないのであまり信用できない。首相などが『もう払えねぇ! どう叩いても出ねぇよ!! 煮るなり焼くなり好きにしろい!』とか言って机の上にあぐらをかいて開き直り出したら大変だ。それに、この本では『なるべく勝手に生きていく』ということをテーマにしたいので、ここはひとつ『貧乏人が束になったら何とか生きていけたりするのではないか?』という作戦を練っていきたい」(p.97)

要は政府を信用していないのである。生活保護をもらうときに、行政職員にいろいろいじめられたという話を聞くが、生活費を国家からもらうということはそういういじめにも遭いかねないということだ。国家が困った国民にニコニコ金をくれると思っていたら大間違いだ。

僕は小さい頃から母に、「日本がもう一回焼け野原になってもヤミ市で商売したりしながら、生き残れるような子になってね」と言われてきた(変な親だ)。松本さんは必ず生き残れるタイプだと思う。世界経済が崩壊したり、国家が財政破綻するかもしれないという状況において、日本に必要なのはグローバル人材なのか。グローバル人材を育てても、日本が破綻したら外国に逃げるだけじゃないのか。松本さんのようなサバイバル人材が危機の日本で何かを起こしてくれるんじゃないかと思う。

「好き勝手に生きていく」ということは、政府にも会社にも頼らずに生きていくということである。それは簡単なことじゃない。経済的に自立し、コミュニティで自治をつくり、自分のポリシーに従って生きていくということだ。

僕は、松本さんの「好き勝手に生きる」というポリシーは、ひとつの正義観のあらわれだと思っている。これは常に政府や社会に対してファイティングポーズをとっていくということだと思う。自分のことは自分で決めることができれば、自分が正しいと思ったことをやれるようになる。政府に頼ったり、会社に付いて行ったりすれば、自分の価値判断ができなくなる。闘い続けることは大変だけど、ファイティングポーズをとってはじめて見えてくる世界もある。この本は、もうひとつの世界の可能性を見せてくれる本なのである。

2012年6月14日木曜日

豊かさと厳しさと―書評 坂口恭平『TOKYO 0円ハウス 0円生活』

「ゼロ成長でも絆があれば豊かに生きれる」みたいな議論はヌルくて好きになれない…。
でも勝間和代的な「勝ち組になって年収10倍アップ」も説教くさくてイヤだなぁー。

そんな方にぜひ読んでいただきたいのが、
坂口恭平さんの『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(河出文庫、2011年)です。

著者の坂口さんは建築家。なのですが…。
そのスタイルは僕らがイメージする「建築家」とは全く違っておもしろい。

大きな建築物をつくることには興味がない。
図面をきっちり引いたり、精巧な模型をつくることにも熱心になれない。

彼は名門で知られる早稲田の建築学科の出身。
だけど在学時代やっていたことは他の学生とは全然違ったようです。

ある日大学で「都市の再生」という課題が出たときのはなし。
既存の建物を選んでそれを改築、増築するという課題です。
坂口さんが目をつけたのは、廃墟となったマンションの貯水タンク。

坂口さんはこれを改築する、のではなく、
「ここにただ住む」というパフォーマンスをすることにした。
貯水タンクに、水と食料と発電機を持ち込み、その様子をビデオカメラに撮影。
周りの学生が図面や模型を提出するなか、映像を授業の課題として提出しました。

卒業論文では「路上住宅の百科事典」をつくったそう。
ホームレスの人たちの「棲家」を訪ね、
彼らと会話をしたり一緒に行動したりする。
そのなかで「棲家」の設計や彼らのライフスタイルを調べたようです。
(この卒論はのちに『0円ハウス』という本になりました)

★★

本書はこの卒論後、さらにフィールドワークを重ねてつくられた、
卒論の続編ともいうべきものです。

主役は「鈴木さん」という隅田川沿いの路上住宅に住むおじさん。
いわゆるホームレスなんですが…。
その生活は一言でいうと「豊か」です。

鈴木さんの家。ライトがあり、テレビがあり、ラジオがある。
定価1万五千円の高級鍋もある。簡易な風呂もある。なんでもある。
挙句の果てに、一緒に住んでいるパートナーの女性までいる。
すごい。すごすぎる。

家にあるものはすべて鈴木さんが拾って集めてきたもの。
電気はガソリンスタンドからもらってきた自動車用バッテリーでまかなう。
まさに本のタイトルにあるような「0円ハウス」。

ごはんは毎日3食、自炊をしてしっかり食べる。
毎日、焼酎を飲む。たばこも吸う。
こんな生活を川沿いに立てたビニールハウスで送ることができるんですね。

★★


鈴木さんの収入源はアルミ缶集め。
月に5万円近く稼ぐそう。
毎日6時に起きて、7時〜9時までアルミ缶を拾う。
さらに昼寝をしてから、夜8時〜1時近くまでまたアルミ缶を拾う。
これをほぼ毎日こなす。勤勉。

アルミ缶回収の方法もとても効率的で洗練されています。
みんなが集中する自動販売機やコンビニのゴミ箱は見ない。
毎日どこのエリア、どこのお店でアルミ缶が出るのかを把握しているのです。
そのうえで綿密な計画を立て、パートナーとうまくエリアや回収時間を分担する。
鈴木さんは、戦略性と合理性を兼ね備えた方ですね。
僕の師匠である上山信一がホームレスになったらこうなりそうです(笑)

さらにすごい鈴木さんのエピソード。

鈴木さんがアルミ缶回収に使うピカピカの自転車。
これは毎日川沿いを走っていた会社員に貰ったそう。
アルミ缶回収のときに挨拶をして顔見知りになったら、
彼がサウジアラビアに転勤するときに家族三人で挨拶に来て、
自転車と判子が付いた「自転車譲渡証明書」を持ってきた。
「絶対帰ってくるからそのときまで頑張ってください」と言われたんだって!
物語のような話です。

鈴木さんはお店やホテルの従業員さんや主婦と仲良くなり、
ゴミとして出たアルミ缶をとっておいてもらうことができる。
交渉の時は全部正直に、「私はこれで生計を立てていますので、もしもよろしかったら、ここのアルミ缶を毎回ください」と言う。
絶対に盗みはやらない。禁止されていることはやらない
誠実な人だー。

鈴木さんはこんな人柄なので、警察や河川を管理する国交省の職員とも仲良くなる。
少年に家をいたずらされたら警察がすぐに対処してくれる。
月に1度川に検査にきて、住宅の撤去を命じる国交省の役人も、
鈴木さんの前では申し訳なさそうに作業をする。
鈴木さん、あなたは何者なんですか(笑)

★★

本の中で、鈴木さんが
「工夫して暮らすことがとてもおもしろいからこの生活をしている」
「コンクリートの家には住みたくない」
ということを言っています。

著者の坂口さんはこの言葉を受けて、
「これらの言葉は、金銭的な価値を基準にした生活ではなく、人間的な生活をおくるために0円生活をやっているようにも取ることができる」
といっています。

僕は「金銭的な価値を基準にした生活」が「人間的な生活」でないとは思いません。
でも、鈴木さんの「工夫して暮らす」という生き方は豊かな生き方だと思います。
彼は自由で、自分の生活に納得して生きているように見えます。
それは直感的に良い生き方だなぁと思います。

河川敷の国有地に住むことは違法だし、
彼を迷惑に思っている人も少なくないかもしれない。
それでもこの本の読者は鈴木さんの生き方を肯定したくなるでしょう。

でもよくよく考えてみると、鈴木さんみたいな人ってもともとどうやったって良い生き方をできるのではないか、とも思うのです。

鈴木さんは仕事ができるし、誠実だし、コミュニケーション能力が高い。
こんな人がホームレス生活してるというのは、超レアケースだと思います。
鈴木さんが会社を興したら成功できたのではないでしょうか。

仕事がちゃんとできなくて、不誠実で、コミュニケーション能力が低い、鈴木さんの逆のような人がホームレスになってしまう。

僕はこの本を読み、ホームレスとして「豊かな」暮らしができる鈴木さんは、とっても強い人で、このように生きれる人はやはりごくごく少数なのだろうなぁという「厳しい」現実を目の当たりにした気分になりました。

★★

でも、このような感想を持つことと、この本がとてもおもしろく重要な作品であることとは別の問題です。

坂口さんが鈴木さんと信頼関係を築き、丹念なフィールドワークを重ねて、鈴木さんの快適な「0円ハウス」と豊かな「0円生活」を描き出したのは本当に見事です。

この本には僕らが見ておいたほうがいい「もうひとつの日本」が描かれています。

2012年6月4日月曜日

第2回!院生によるBook Jockyイベント開催!

先週の金曜日に、第2回Book Jockeyイベントを開催しました。
(前回の様子はこちらです)














そこで僕が紹介した本をご紹介します!


★★
1.高橋秀実『からくり民主主義』(新潮文庫、2009)620円】
僕が知るなかでもっとも読みやすく、かつ本質をついた民主主義本です。

民主主義の「フィクション性」をゆるいタッチで描いてますが、
その急所をしっかりと突いている。著者のジャーナリスト魂が光ります。

意外や意外、この本の解説はあの村上春樹。内容も素晴らしい。
解説から読み始めると、著者との距離がぐっと近づくはず。
(この本は以前ブログで取り上げました)

2.山本七平『空気の研究』(文春文庫、1983)【490円】
よく「空気を読む」といいますが、そのときの「空気」って何だろう?
そんな疑問に挑んだ歴史的名著です。

著者は「空気」が発生するメカニズムを、「対立概念で対象を把握することの排除」に見ました。
本来相対的に検討すべき複数のことがらのうち、ひとつを絶対的な存在へとあがめ奉り、その他を全面的に排除するということです。

日本では空気で物事が決まるといいます。
僕は自分がそんな状況に直面したときも、この本の内容を思い出せば、空気をひっくり返せるような気がしてきます。

空気を読みたい人にも、読みたくない人にもおすすめです。

(こちらも以前ブログで取り上げました

3.イェーリング『権利のための闘争』(岩波文庫、1982)567円】

僕は高校時代にこの本を読みました。
あまりに感動して、一時期この本の題名をメールアドレスにしていました(イタい)。

そんな思い入れのある本です。

「権利のために闘うことは、自分だけではなく、国家や社会に対する義務である」
こんな熱(苦し)いメッセージを前面に出した本です。

以前、僕の師匠が、「民主主義は『俺がやらなくて誰がやる』って人がどれくらいいるかで決まるんだ」と言っているのを聞いて、
この本のことを思い出しました。

自分のために、あるいは誰かのために闘うときに勇気をくれる本だと思います。
★★


第3回  6月15日(金)のイベントはこちらから申し込みできます。
ご参加をお待ちしておりまーす(^o^)





2012年6月3日日曜日

中学校で原発問題の授業をお手伝い(父と共演)

先日のブログで、杉並区立和田中学校の総合学習の授業をお手伝いしているとご紹介しました。

その授業が、今週の木曜日(28日)にありました。

テーマは「~原子力発電所、再稼動させる?させない?~」。
和田中学校の3年生が対象です。(授業の詳細はこちら

授業詳細のリンク先に飛んでもらえればわかるのですが、
この授業のゲスト講師の1人はうちの父!

こんな感じで親子共演しましたよ〜。



それはおいといて(笑)。

ちょうど28日の新聞各紙の1面はすべて「首相、大飯原発再稼働容認へ」。
いいタイミングで授業が組めました。

授業は45分授業を2コマ連続でやります。
体育館に3年生の全クラス140名が集まります。

みんな椅子をもってぞろぞろと体育館に集合。
なんか懐かしい感じ(笑)




まずは校長から生徒たちに問題が出されました。

「福島原発の事故前に、日本の総電力に占める原子力発電の割合はどれくらいだったか?」
「現在、日本には稼動可能な原子力発電所はいくつある?」






答えは30%と、50基。みんな悩み顔。
答えを知っていた生徒は少なかったみたいです。

ここで第一回目のアンケート。

「政府が安全と判断した場合、原子力発電所を再稼動させてもよいか? 再稼働すべきではないか?」の択一問題です。みんな真剣に回答してます。


次にグループになって、専門家への質問を考えるために話し合います。
さすが1年生からこの授業を受けているだけあって、みんなスムーズに議論をスタート。これには驚きました。





5分の議論のあと、各グループの代表が質問を発表。
質問はプロジェクターに写します。



それに対して専門家が回答。

下は原発の構造を説明する父。難しい内容でしたが、みんなメモをとりながらしっかり聞いてます。


今回は原発再稼働の安全性基準についての質問には父が回答、原発停止が経済に与える影響については中央電力の中村さんが回答しました。

専門家の回答が終わったところで、前半の45分が終了。
10分の休憩に入ります。

すごいのが休憩中も生徒さんが質問に来ていたこと。授業に対するモチベーションが高い。


休憩が終わり、次に登場するのがコレ。iPad。


専門家の説明を受けて、 iPadを使って4名でグループワークをします。



グループワークでは、グループで再稼働賛成、反対を話し合い、グループでの結論を出します。違う意見を持った生徒が着地点を探りながら、意見調整をします。

そして議論の結論&その理由をiPadに入力すると、
それが先生のPCに送られ、各グループの結論が一覧に!
このシステムは富士通に開発してもらったそうです。


気になる結果は 、なんと「稼働賛成」50%、「稼働反対」50%。
全36グループが18対18で割れたから驚きました。

専門家と質疑応答をして、グループでじっくり話し合った結果、原発再稼働についての中学生の意見は真っ二つに割れました。これは軽視できない結果でしょう。

政府は政治判断で大飯原発の再稼働容認に動き、強硬に反対していた橋下市長も「負けといえば負け」と言って、事実上の再稼働容認を表明しました。


でも世論調査を見ると、原発の周辺自治体と大阪市では「反対」とする答えがいずれも半数を超えてるんですねぇ。

僕は再稼働容認派ですが、生徒たちの議論や世論調査の結果を見ると、政府の「政治決断」の正当性っていったい何なんだろうと考えてしまいます。

政治家がこの問題を必死に考えていることは間違いないですが、政治家に決断を任せているだけでは、国民がその結果に納得できるのでしょうか。中学生だけじゃなくて大人もじっくり考える機会が必要だと思います。

閑話休題。

最後に授業前の打ち合わせの話。

なんと代田校長先生のポケットマネーで給食をご馳走になりました。

メニューは親子丼、豚汁、きゅうりのナムル風、牛乳。
1食303円とのこと。



これが美味してびっくり。話を聴いてみたら、以前給食で文部科学省表彰を受けたことがあるそうです。和田中はなんでも一番にならないと気がすまないのか(笑)




給食を食べながら打ち合わせ中の代田校長先生(手前)と、ゲスト講師である中央電力の中村誠司社長(左)と、うちの父でーす。


2012年5月28日月曜日

和田中学校で授業のお手伝いしてます。


今年度から、杉並区立和田中学校の総合学習授業の設計に関わっています。

今日も打ち合わせで和田中に行って来ました。

校長室で打ち合わせをしていたのですが、それが終わると、生徒たちが校長室に雪崩れ込んできました。下は椅子をとられて困っている校長先生。


和田中学校の校長室は基本的にオープンで、生徒でも気軽に出入りできます。マンガも置いてあります。校長先生と生徒の距離はめちゃくちゃちかいです。下は生徒が校外学習でつくった干物をお土産でもらい喜んでいる校長先生(顔ぶれぶれ)。



★★
和田中学校は、リクルート出身の藤原和博さんが民間校長を務めていたことで有名です。

藤原さんは、都内初の公立中学校の民間校長として、PTAの廃止、大手の進学塾講師を学校に招いて有料で補習授業を行なう「夜スペ」や、地域の大人を授業に巻き込み自営業者やホームレスを講師に迎える「よのなか科」などを実施し、公立学校の常識を覆してきました。

いやはや、規則と慣習でガッチガチの公立学校でこれをやったのは本当にすごい。よく考えると、リクルート×公立中学校っていちばんミスマッチな関係のような・・・笑 藤原さんが校長に着任した時点で革命は始まっていたのでしょうねぇ。

★★
藤原さんは2008年3月に退任され、後任には再びリクルート出身である代田昭久さんが就任されました。僕はこの代田先生とともに「よのなか科next」という授業の企画設計をしています

この授業は総合的な学習の時間に行います。3年生は、隔週で2コマずつ約25回(年間約50コマ)、1,2年生は、月1回の年間10コマをよのなか科nextに使っています。

なぜ僕が「よのなか科next」のお手伝いをすることになったのかというと、この授業と、僕の研究対象である「討論型世論調査」の設計思想が非常に似通っていたからです。僕の親しい後輩が研究の関係で和田中学校に出入りをしていて、討論型世論調査とよのなか科nextの親和性に気づいて、僕と代田先生を引き合わせてくれたのです。

「よのなか科next」は、「今の生徒たちが10年後、必ずや直面し解決していかなくてはならない社会の重要なテーマ」について、個別学習・グループ学習・全体学習を組み合わせて、生徒の【考える力】【伝える力】【聴く力】を伸ばし、社会で活躍するために必要となる、【他者と対話する力】を培うことを目的としています。

他方で討論型世論調査の目的は、世の中で意見が対立している政策課題について、一般の市民が【話し】、【学び】、【考える】というプロセスを体験することで、その問題についてじっくりと自分の考えを深める機会を提供することにあります。具体的にはランダムサンプリングを経て200〜300人の市民を集め、資料やデータの提供、市民同士の討論、専門家との質疑応答という「熟議」の機会を提供して、熟議の前後で市民の意見がいかに変化したのかを検証します。

僕は2009年の秋から曽根泰教先生のもとで討論型世論調査の企画設計や運営に関わってきました。2010年には藤沢市で2度の調査を行い、2011年には日本で初めて全国規模での調査を実施しました。この調査で得たノウハウで誰かのお役に立てないかなと思っていたところ、代田先生と出会ったというわけです。運が良かったです。

★★
今年度の「よのなか科next」では、これまで「風評被害問題」と「がれき処理問題」を扱いました。がれき処理問題の回はNHKのニュース9などで取り上げられました。(こちらのブログで報道の様子が紹介されています)

よのなか科nextでのアンケート結果は後日分析を行い、公表する予定です(代田先生や研究パートナーと相談中)。また、よのなか科nextの授業によって生徒たちにどのような変化が生まれたのかも、継続的にアンケートをとって検証していきます。

次回の「よのなか科next」は原発再稼働問題。現在鋭意準備中です。こちらのブログでも授業の内容をご紹介できればと思っています。

最後に校長先生と生徒さんたちの写真を一枚。

こういう雰囲気の学校だから、心から「お役に立ちたい!」と思えるのでしょうねぇ。

それはそうと、頭に巻いてるのは何だろう?(笑)





2012年5月21日月曜日

「本を肴に、美味しいお酒と料理を楽しむ」イベントを開催しました

先週18日(金)、院生仲間5人でイベントを開催しました。

イベントのコンセプトは「本を肴に、美味しいお酒と料理を楽しむ」。
立川の小さなカフェを借りて、2週に1回のペースで3ヶ月ほどイベントをやっていきます。

会場はこんな場所。定員は15人ほど。


リビング・ダイニング風のキッチン。メンバーが料理を振る舞います。


飲み物のメニューとイベントのご挨拶。


紹介する予定の本はこんな感じでディスプレイ。


このイベントの中心は”Book Jockey”という本のレコメンド手法です。
(手法といっても僕らがこのあいだ考案したもので、全く広まってません笑)
Book Jockeyは、DJが音楽をremixして途切れなく音楽を流していくのと同じイメージで、数人のBook Jockey(BJ)が1人3分で自分が選んだ本を紹介し、それを途切れなく連続で行なっていくというものです。

ここに並んでいる4人がBJです。
ビールを片手になごやかな雰囲気。


いちばん右から石橋一希(首都大M2/都市計画)、僕、下西風澄(東大情報学環D1/哲学、身体論)、連勇太朗(慶応政策・メディア研究科D1/ 建築)。もうひとりここにはいませんが、助友文香(首都大M2/空間デザイン)の5名がメンバーです。

BJは自分の本を紹介する際に、必ずその本と前の人が紹介した本を関連づけなければいけません。ここをいかにうまくできるかがBJの腕の見せどころ。
前の人の本と自分の本の関連を1分で説明した後に、本の紹介を3分で行います。今回は石橋、僕、下西、連という順番にしました。


制限時間の1分と3分は厳守。
下の写真を見ると、机左側にiPadがあるのがわかると思います。
この時計アプリで時間を管理します。
時間超過してもプレゼンを続けると客席からはブーイングが来ます(笑)

事前にどのBJが何の本を持ってくるかは、お互い秘密にしています。
前のBJが本を紹介する3分間で、次のBJは自分の手持ちのなかからどの本を紹介するかを決めなくてはいけません。これがなかなか難しい。自分の番の10秒前までどの本を紹介するか悩むこともあります。このLIVE感こそがBook Jockeyの魅力だと思っています。

本を紹介しているときはこんな感じ。けっこう緊張感があります。


今回のイベントで紹介された本は以下の12冊です。


・1ターン目


・2ターン目


・3ターン目

1ターン目から3ターン目までノンストップで12冊を紹介します。

連⇒石橋へのターンまたぎの際は、石橋は連の紹介した本を受けて自分の本を選んでいます。2ターンから3ターンへのつなぎをみると、隈研吾が連続してます。Book Jockey的にはこれは反則かも(笑)。

リー・クアンユーとダ・ヴィンチがどう繋げられたのか、ゲーテと隈研吾はどんな関連があるのか、気になりませんか? 来てくれたお客さんのなかには、「本と本との間のインターバルの話がいちばんおもしろかった」とおっしゃる方もいました。このおもしろさはぜひLIVEで体感していただければと思います。

最後にメンバー特製の料理の写真を少し。イタリアンレストランで数年バイトをしていた連の特製ペンネです。




次回のイベント開催は6月1日(金)18時15分〜の予定です。
場所は立川のクラウドカフェ

興味がある方は僕のメールアドレス(marin.mat2 [@]gmail.com)までご連絡ください。

会場が小さいため、参加希望者多数の場合は抽選となります。
たくさんの方に興味を持っていただければ嬉しいです。