最近また夏らしくなってきましたね!
きのう僕は、東大の先端研で行われた、DO-IT Japanの公開シンポジウムに行ってきました。
DO-ITとは、障害や病気を抱えた小中高校生,大学生の高等教育への進学とその後の就労への移行を支援し、そのなかから将来の社会のリーダーとなる人材を養成することを目的としたプログラムです。
DO-ITの本部はアメリカのワシントン大学にあり、この理念に賛同する研究者などによって、世界中に取り組みが広まってます。DO-IT Japanは、東大先端研の中邑賢龍先生の研究室が中心となって運営しています。※今年5月に朝日新聞に掲載された中邑先生のインタビュー「デコボコを愛せよ」はかなりグッと来る。オススメです。
DO-ITの本部はアメリカのワシントン大学にあり、この理念に賛同する研究者などによって、世界中に取り組みが広まってます。DO-IT Japanは、東大先端研の中邑賢龍先生の研究室が中心となって運営しています。※今年5月に朝日新聞に掲載された中邑先生のインタビュー「デコボコを愛せよ」はかなりグッと来る。オススメです。
僕は、歳の離れた友人(高校2年生)がDO-ITのスカラープログラムに選抜された関係で、プログラム期間中だけ彼のサポートをしておりました(このプログラムの倍率は10倍近いらしい!)。DO-ITのことも彼を通じて初めて知りました。
僕が面白かったのは、読み書きに困難がある学習障害の小学生が、iPadを使うことで、授業についていけるようになり、宿題を出せるようになり、さらにはテストの成績が上がって偏差値も上がるという事例です。
紙に字を書くことができない子でも、タブレットで字を入力することができる子は結構いるようなんです。
学校で紙で渡された宿題をデータとしてタブレットに取り込んで、そこに回答を入力する。その回答が入ったデータをプリントアウトして教師に提出する。これを学校に認めてもらうことができれば、その子は授業についていけるようになるのですね。
シンポジウムの報告では、A4一枚の紙の宿題をこなすのに2〜3時間かかっていた小学生が、iPadを利用することで20分に短縮できたという話がありました。いやはやiPadさんはこんなところでも大活躍だったのですね〜。ですが、学習障害を持った子どもたちがみんなこのような特別措置が受けられるかというと、当然そんなことはないわけです。
iPadを学校に持ち込むというのは、多くの小学校では認められていません。これが許可されるためには、その子どもに限っての特例措置として学校が認めるだけの「合理的な理由」が必要になります。
そのデータをつくるために、学習障害などの子どもたちに協力してもらって様々な実験をしているのが先述した東大先端研の中邑研究室なわけです。※DO-ITもそのような支援対象の子どもたちにリーチするための方法の一つのようです
ただ、中邑先生がデータを持って「この子はiPadを使うことで読み書きの困難を克服できます」といっても、なかなかそれを認めない学校も多いみたいです。中邑先生はシンポジウムで、校長と大喧嘩して学校を飛び出してきたことが何回もあると言ってました。これまでは「合理的な理由」を持ちだしても学校側が拒否すればそれで泣き寝入りするしかなかったわけです。
しかし、その状況が今年6月に可決成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」で一気に変わろうとしています。※法案についてはこちら。あと、シノドスに掲載された弁護士による解説が超充実してます。シノドスさすがだわ。
それで、この法律のフレームは、障害者が公的な機関に対して、「必要かつ合理的な配慮」を求めることができ、明確な理由なしにそれを拒否(否定)することは、「差別」として禁止されるというものです。
ちなみに民間事業者等に対しては努力義務となっています。
「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。」(8条2項)
ここで重要になるのは「必要かつ合理的配慮」なるものがどういうものか、ということですが、その定義は明確にはされていません。法律の目的には以下のように書いてあります。
「障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する」(1条)
要は、障害によって色んなことが不利にならないように社会で頑張っていこうぜってことですね。※ちなみにこの法律は民主党政権時代に原案が策定され、自民党政権で可決成立したという極めて珍しい法律です。これを成立させたのは自民党なんですよ。これは自民GJ。
この法律の存在で、先ほどの「障害のビハインドを補うために教室でiPadを使わせてくれぇ」という生徒の要望を学校が蹴ることは極めて難しくなるわけです。公的機関にはそういう強制力が働くようになる。民間事業者にも努力義務が課せられる。法律すげーよ、法律。
とりあえず法律ができたことは良かったわけですが、ここで大事なのは、行政機関も民間事業者も、必要かつ合理的な配慮をするのは、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」なのです。
障害者本人やその周りの人がそういう意思表明をできなければ、別に何の対応をとらなくてもよいということですね。もちろん、一部の意思表明をできる人たちがリードしていけば色々な仕組みが整えられていくわけですが、世の中には表明する力を持たない障害者も多いわけで・・・。
この法律が出来た後も、「声なき声」をどう拾い上がるかというのは社会的な課題で在り続けるということです。というのも、今回のDO-ITのシンポジウムを聴いていて思ったのも、まさにこの「声なき声」問題だったんですよね。
先ほどから挙げているiPadを使っていた小学生の例も、この子はDO-ITスカラーの選抜をくぐり抜けた子で、要は「選ばれた」障害者なわけです。おそらくこの子を支える周りの人も教育熱心な方なのでしょう。
世の中には、学習障害を抱えたまま、親や学校からの支援を受けられずにそのまま不登校になったり非行に走ったりする子もたくさんいるわけで、そういった子をどこまで拾い上げられるかが今後の論点になるでしょう。
学校システムからドロップアウトしてしまった子どもや大人への受け皿って、公的な枠組みが全然できていないところなんですよね。いまはNPO法人の「キズキ」とか「育て上げネット」などが頑張って担っている。もっと大きな枠組が必要なんですよ、まじで。
この2つのNPO法人を頼ってくる人たちのなかにも、学習障害や知的障害の人が一定数いると思います。その人達は多くの場合、すでに学校をドロップアウトして何年も経ってしまっているケースが多いはずです。そういう人たちをすくい上げる、あるいはドロップアウトする前に何とかして学習を継続できるような枠組みが必要ではないか。
近年、技術面でも法制度面でもサポートするための状況は整ってきているわけです。中邑賢龍先生は「タブレットPCの登場は障害児教育にとって革命だ」と言ってました。また障害者差別解消法の成立も日本の障害者政策史に残る快挙。タブレット&障害者差別解消法が揃ったあと、次の矢のアイディアが必要ですよね。
僕は、先端研の中邑研究室とキズキ、育て上げネットなどの支援機関が連携できるような体制が出来ればいいと思う。さらにそこに行政も入っていけばいい。まずは都内のどこかの自治体でパイロット的に協力連携のプロジェクトを始めたらいいんじゃないか。中邑先生も、キズキも、育て上げネットも当事者については様々な情報を持っているわけだから、その情報をつなぐプラットフォームが必要だと思います。
僕で良ければつなぐので、関係者の方興味あったらやりましょう。
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